地理学評論 Ser. A
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徳島県江川付近の地下水の温度と流動
新井 正横畠 道彦
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1990 年 63 巻 6 号 p. 343-355

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抄録

徳島県鴨島町の江川源流の一帯には,年較差約15°Cで吉野川の水温年変化に対して2~4カ月の遅れを示す「異状地下水温」があることが知られている.地下水温・地下水面分布などの観測から,広域にわたり地下水の高温・低温域が帯状に分布していることが明らかになった.水温の帯状分布は季節的に移動するとともに温度も変化し,江川湧水より1.5km下流では位相の遅れはおよそ1年,年較差は約4℃になる.観測結果より,異状地下水温は吉野川の伏流水に起源をもつ地下水の広範囲な移流により発生すると判断された.地下水流速は,高温・低温域の移動速度,水温の帯状分布間の距離,電解溶液の注入により推定したが,多くの場合3~9m・day-1で,とくに約5m・day-1を中心とする範囲に集まる.また,他の事例との比較より,異状地下水温現象の規模は,透水係数をパラメータとして説明できることがわかった.

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