地理学評論 Ser. A
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冬の季節風下の中国南部における層状雲の出現と総観場
中田 裕一
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1991 年 64 巻 5 号 p. 327-346

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抄録

気象衛星「ひまわり」の画像をみると,冬の季節風下に中国の大陸上を中心に層状の雲が張りついていることが多い.本稿ではこの雲を層状雲とよび,拡大型・縮小型の2つのタイプに分類した.拡大型の雲域は中国南部を中心に大きく広がり,縮小型の雲域はチベット高原の東方または東南東方に存在する.本稿の目的は, 2つのタイプの形状を明らかにするとともに,形状がまわりの総観場および総観場の季節変化とどのような対応関係をもっているかを明らかにすることである.その結果次のことがわかった. (1)層状雲が拡大型のときは,地上の前線が中国南岸に停滞し,シベリア気団はこの前線まで達する.層状雲域の南部では南西風が,北部では偏西風が地上の北東風に乗り上げる. (2)層状雲が縮小型のときは,地上の前線が太平洋上にのみ存在し,シベリア気団は変質しながらもフィリピン付近まで南下する.地上の北東風に乗り上げる南西風や偏西風かないので,雲域が残るのはスーチョワン盆地上など暖気と接する一部の地域である. (3)また層状雲の拡大型・縮小型の出現頻度は,シベリア気団の季節的な南下・北上の影響を受けている.

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