1991 年 64 巻 6 号 p. 388-407
従来の目的地選択モデルでは,1回の外出で1カ所の目的地に立ち寄ると仮定されている場合が多い.しかし,現実には1回の外出で複数の目的地を訪れる行動が頻繁に行なわれ,このようなマルティプル・ストップにより,目的地の選択が影響を受ける.本稿では,マルティプル・ストップの研究成果を展望し,それをどのように目的地選択研究にいかせるのかを考察した.目的地を組み合わせる行動により,自宅から目的地までの距離が増加する場合が多く,目的地の選択が影響を受けることを示す実証的な研究成果が蓄積されている.その一方で,目的地で遂行される目的の性質や目的地を組み合わせる順序により,また選択を行なう者の属性や立地環境などにより,マルティプル・ストップが目的地選択に及ぼす影響度が異なることが認められる.今後は,影響度の違いに関する研究を進め,マルティプル・ストップが目的地の選択に影響を及ぼす過程の理解を深めることが必要である.