地理学評論 Ser. A
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多層構造を有する丘陵地斜面における地中水の挙動
小野寺 真一
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1991 年 64 巻 8 号 p. 549-568

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抄録

本稿では,多層構造を有する丘陵地斜面において地中水の挙動を観測し,その結果以下のことが明らかになった. (1) 降雨浸透プロセスについては,降雨開始後速やかに,難透水層上で飽和域が形成され,そこから下方の透水層に地中水が供給された.その後山体内部まで浸透すると,山体内部で地中水の圧力水頭の増加が生じた. (2) 山体内部での圧力水頭は,多摩ローム層中に飽和域が存在する場合, 50~60 mmの積算降雨で増加した。しかし,飽和域が存在しない場合は, 90 mmの降雨を要した. (3) 山体内部の圧力水頭の急増は,御殿峠礫層内の飽和域が多摩ローム層中の飽和域と連続したときに生じた.そして,飽和域からの圧力と礫層上部に封入された空気を通して多摩ローム層から伝達された圧力とにより,山体内部での圧力水頭の上昇は15 m H2O以上にも達した. (4) 山体内部で圧力水頭が増加することに伴い,透水層において山体内部から地表へ向かう横方向の地中水の流れが生じ,斜面末端部でも山体内部からの流出成分が増加した.

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