わが国では1970年代に入って,周氷河地形に関する研究が急増した.これは1960年代の第四紀研究の進展の影響を受けたものであると考えられる.研究は周氷河性平滑斜面における斜面物質の粒度組成や移動速度,移動プロセス,斜面形などを明らかにすることから始まったが,これはヨーロッパにおける研究の不備を補うものであった.研究の進展に伴い,地質ごとに斜面物質の粒度組成が異なることや,斜面物質の安定度に違いのあることも明らかにされ,それらと植生分布との関係も調べられた.また最終氷期最盛期頃に加えて晩氷期やネオグラシエーション期に岩屑生産のあったことも明らかにされつつあり,周氷河性平滑斜面の研究は第四紀研究や植物生態学に対しても重要性を増しつつある.