地理学評論 Ser. A
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地形研究を通してみた自然地理学
田村 俊和
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1993 年 66 巻 12 号 p. 763-770

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抄録

地形学の研究とは,地表面の形態を一つの重要な手がかりとして,地表面各部分の性質およびその変化傾向を知るための,成因論的アプローチである.その対象としての地形には,「かたち」,「もの」,「うごき」,「とし」の,相互に関連した4つの属性がある.地形学研究は,主として「うごき」に着目した地形営力論あるいはプロセス研究も,主として「とし」に着目した地形発達史あるいは編年的研究も,それぞれ,地表面の環境にかかわるさまざまな学問分野と密接に関連している.それらから地形学をきわだたせている特徴は,大きさや形のある現実の地表空間としての地形を扱うことであり,また,対象とする地形が,地表面の複合的な諸性質を統合した可視的な指標となることである.これらの特徴こそ,地形学の自然地理学としての特性を如実に表わしたものではなかろうか.それは,環境とはその主体にとっては何よりも空間的実体であり,自然地理学は「自然環境を空間的に統合して捉えるたあの方法とその統合した知見の総体である」ことに存在理由をもち,その空間的統合にあたって地形の指標性とその認識を可能にする地形学の方法が大いに有効性を発揮するからである.

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