地理学評論 Ser. A
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千葉県市川市柏井町四丁目における不耕作農地の形成と農業経営
森本 健弘
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1993 年 66 巻 9 号 p. 515-539

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抄録

本研究では,大都市周辺の集約的農業地域における不耕作農地の形成について,その実態と形成要因の解明を土地利用と個別経営の調査によって試みた.研究対象地域とした千葉県市川市柏井町四丁目では, 1970年代から兼業化・脱農化の一方,残存した専業農家・第1種兼業農家は経営の重点を施設園芸や梨栽培へ移してきた.この変化と並行して不耕作農地が形成され,台地では不耕作農地が施設と混在し,低地ではその大部分が不耕作農地となる景観が形成された.研究対象地域の農家による不耕作農地のおもな形成要因は,施設園芸や梨栽培への集約的な労働投入による農業労働力の相対的な不足であり,また田の環境の悪化,および農外就業の進展であった.不耕作農地の形成の基盤には,市街化調整区域における農地の転用規制,圃場条件の悪さ,農地地価の上昇と農地貸借の困難さがあった.研究対象地域以外の居住者へ所有権の移転した不耕作農地も多く存在した.この場合には,兼業化・脱農化がおもな形成要因であること,農地転用に伴う代替農地の取得が関与した事例の多いことが推測された.

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