1993 年 66 巻 9 号 p. 540-554
本研究は20世紀初頭の東京におけるすべての都市的土地利用を可能な限り詳細に計測し,都市的土地利用に基づく地域構造を考察しようとするものである.計測は『震災前東京の土地利用復元図』(正井・洪, 1992)の100mメッシュ交点法分析によった.都市的土地利用は13の種目に分け,それぞれについてヘクタール単位の数値で面積を測定するとともに,封建社会から近代産業社会へ移行しつつあった社会経済的側面も考察した.計測データは同心円・セクター別に整理し,東京の地域構造を捉えた.また,時代的変化をより明らかにするため,幕末江戸の都市的土地利用とも比較した.それによると,市街地総面積の増加は1.5倍であったが,とくに政府・公共・病院用地,軍事用地,教育用地,工業用地あるいは広義の商業用地などが,絶対的にも相対的にも増加したのに対し,幕府や大名関係の用地あるいは仏閣用地が絶対的にも相対的にも減少するなど,さまざまな新しい土地利用が封建体制下の土地利用と置き換わっていることがわかった.同時に,全体としては低地指向の都市化が多少進んだことも明らかとなった.