地理学評論 Ser. A
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仙台市における近年の住民属性と居住地区分化の変質
高野 岳彦
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1994 年 67 巻 11 号 p. 753-774

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抄録

本稿では,仙台市を対象に近年の住民属性と居住分布の変化を考察した.1970年と1985年の国勢調査メッシュ統計を用い,分割メッシュを単位地区とし,DIDを対象範囲とし,34の住民属性指標を選択した.はじめに両年について因子生態分析を行ない,因子構造の検討から居住特性の変化の特徴を考察した.次いで各因子と関連の強い諸指標について地帯別・セクター別の分布を検討し,その変化傾向を把握した.見出された変化傾向は次の3点にまとあられる.
(1)都心部に集中をみせる専門技術管理職層,逆に都心で減りつつある家族従業者・自宅就業者層,都心外への拡散を強める商業・販売従事者群,旧市街地における急速な民営借家化・単身世帯化・高齢化・少子化の進展,ブルーカラー層の著しい減少など,従来の「同心円型」属性の分布に多様な変化がみられた.(2)従来明瞭であった東南部低地のブルーカラー層と西北部高燥地のホワイトカラー層のセクトリアルな対比が,ブルーカラー層の大幅減少や専門技術管理職層の都心部集中などにより不明瞭になった.またブルーカラー層がホワイトカラー層に対比されるだけの社会集団としての意義を失った.(3)都心部の居住水準が大幅に向上し,都心部の居住地区としての意義が変質してきたことが把握された.以上の変化は,仙台市の都心機能の拡大を直接の要因としつつ,わが国産業の脱工業化・ソフト化や,少子化・高齢化・小家族化などの家族形態の構造的な変化を背景として生じているものと考察される.

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