本稿は外注利用の側面から京浜地域外縁部における大手電機メーカーの連関構造の解明を試みた.事例としたT社青梅工場は,研究開発と生産機能を担う当地域の代表的な大規模工場である.
同工場は近年開発部門の充実が著しいが,当地域で依然として生産を続けるため,生産の効率化が要請された.そのため高付加価値の工程の内製化に加え,京浜地域の高度な加工技術を有する業者群へ外注を依存した.外注業者群は,技術の専門化と取引先の多角化を通じて経営基盤の安定を図り,同工場との取引に円滑に対応した.外注業者群は生産能力拡充のため分工場を地方に展開し,同工場の広域的な分業体制を形づくった.また外注業者群自体の外注利用により,多様な技術的基礎をもつ業者群が地域的に分業化しつつ組織された.さらにT社系列会社は外注業者の役割を補完する機能を果たした.外注管理政策に基づく外注業者群の柔軟な利用は,同工場が当地域で存立するための重要な基盤である.