地理学評論 Ser. A
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有珠オガリ山における転・落石および乾燥岩屑流堆積物のファブリック
山本 憲志郎
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1996 年 69 巻 3 号 p. 165-183

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抄録

有珠火口原内,オガリ山南斜面に発達する崖錐斜面において,乾燥岩屑流堆積物と転・落石堆積物のファブリックを計測し,両者の違いを明らかにし,移動様式を考察した.乾燥岩屑流堆積物では,礫の長軸方向が斜面の最大傾斜方向と平行で,斜面上方へのインプリケーションを示す.この特徴は礫の形態にほとんど影響されず,礫の長軸長が大きくなるにつれて強まる.こうした特徴は,流動速度の小さいすべり運動による運搬によってもたらされた.転・落石堆積物の長軸方向は,顕著な卓越方向を示さない.しかし,長軸長が大きくなるにつれて,長軸方向を斜面の最大傾斜方向と直交させる礫が多くなる.この特徴は礫の形態にほとんど影響されない.こうした特徴は長軸長の大きい礫ほど礫と礫の間隙に入り込みにくく,斜面上での回転時の姿勢を保持したまま停止しやすいためにもたらされた.

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