地理学評論 Ser. A
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三重県内部川扇状地における植木生産地域の発展と存立基盤
卜部 勝彦
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1996 年 69 巻 5 号 p. 327-352

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抄録

本稿は,植木生産地域の発展と存立基盤について三重県内部川扇状地での事例から検討したものである.高度経済成長期以降,、内部川扇状地における植木生産はサツキを特産樹種とした寡品目大量生産を軸に大きく発展した.この間,生産地域は明治期に植木が導入された鞠鹿野地区からその周辺地区へと拡大し,流通機能についても仲買業者を中心とした集出荷体制が次第に確立されていった.一方,この時期における農家の植木生産経営は,既存の営農部門と植木との複合経営による新規参入農家が後に植木の専作化,多品目化を経て,最終的に仲買業者へと転化していくことが判明した.これらの点を整理すると当該地域は,生産・流通の内部機構が次第に機能的に組織化された,いわば主産地形成がなされて発展してきたものといえる.またその機能的組織体系を空間的にみると,管理組織体である仲買業者が集積する鞠鹿野地区(流通機能中心)を核に,植木生産農家が集積する周辺地区(生産機能中心)が配置されていることが明らかとなった.つまり青果物日地でみられる1つの管理組織体が核となった空間構造とは異なって,植木生日地域の場合,地区レベルそのものが核となる空間構造こそが,地域の発展とかかわりをもつ存立基盤であると指摘できる.

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