本稿では,ロサンゼルズの日系エスニック商業・業務地区,リトルトーキョーの再開発過程を事例としつつ,文化・社会空間の生成と変容の過程におけるシンボル化過程の性質と役割を考察する.最初に三つの重要な概念的前提である集団(エスニシティ),空間(エスニック文化・社会空間),過程(シンボル化過程)について考察し,とくにRowntree and Conkey (1980)によって提示された「ストレスーシンボル化過程」の連続体モデルを検討した後,リトルトーキョーにおける戦後の変容過程,とくに都市再開発過程の進行とその性質を概観した.その結果,リトルトーキョーの再開発過程は,Rowntree and Conkey (1980)の連続体モデルに大筋において適合していることが判明したが,文化的・歴史的コンテキストの違いから初期相が短かったこと,後期相の途中においてシンボル化の方向性が転換し,新たなストレスーシンボル化のサイクルが再生産されたと解釈できることなど,モデルとの重要な相違も観察された.