地理学評論 Ser. A
Online ISSN : 2185-1735
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
富士山北西斜面の森林限界付近における気候環境
浜田 崇菅野 洋光岡 秀一
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 73 巻 5 号 p. 435-447

詳細
抄録

富士山北西斜面の森林限界付近において気象観測を実施した.森林帯の上限(C地点)および綾性化したカラマツのパッチ状群落出現部 (B地点)では気温および地温樹木限界付近(A地点)では地温および日射量を測定した.1994年7月から1年間の観測結果に基づいて樹木にとっての気候環境について考察した.B・C地点は暖かさの指数からみて森林の成立は可能である.日最低気温が0°C以下の低温な期間はB地点で約9カ月,C地点で約8カ月であった.土壌の凍結期間はA・B地点で約5カ月,C地点で約3カ月であった.B地点における凍結期間の終了が最も遅くまた長い.北西斜面は風衝地のため冬季の積雪深は1mを大きくは上回らないだろう.B地点とC地点との間には冬季の地温に顕著な相違があったことから,土壌凍結が調査地域の森林限界の形成に関わっている可能性がある.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top