地理学評論 Ser. A
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GISを利用した火砕流の被害予測と避難・救援計画—浅間山南斜面を事例として—
高阪 宏行
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2000 年 73 巻 6 号 p. 483-497_2

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抄録

日本でも多くの活火山に対し火山災害予測図が作成されてきたが,この地図は火山災害の物理的状況を表すだけで,地域社会に与える被害を予測するものではない.火山災害予測図を基礎資料として,人口分布,道路・農地・公共施設などとの位置関係を探ることによって,初めて被害が予測できるのである.本研究は,浅間山の南斜面に発生する火砕流を事例として,GISを利用した防災計画支援システムを構築した.このシステムでは,火山災害予測図をもとに火砕流の流動範囲を噴火後5分以内,5分~10分,10分~15分,15分~30分に色分けして表示するとともに,火砕流のレイヤーと人口分布,道路,鉄道・高速道路,あるいは・学校・病院・ホテルなどのレイヤーとを重ね合わせることで,二っの分布の共通部分から被害予測図を作成した.
被害予測図を用いて被害を予測した結果,被災面積は2,529ha, 人的被害は約3,500人に及ぶことが明らかとなった.また,道路の被災区間は,約1.9kmの国道を含む34.5kmに及び,鉄道や高速道路にも10分~15分で火砕流が到達することが予測された.さらに,防災計画支援システムを利用レて,火砕流が覆う地区をリスク1の地区,その地区周辺で火災が延焼する可能性のある地区を500mバッファのリスク2の地区とし,火砕流に対する緊急計画地域として設定した.また,火砕流からの脱出計画,避難所の設置,避難民の収容計画,救援計画を考察した.

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