2000 年 73 巻 7 号 p. 559-577
多党化した日本における小選挙区制の選挙バイアスを明らかにするために,1996年衆議院議員総選挙の投票データを用いて選挙バイアスを測定した.その結果,英米の選挙について報告されてきたものよりも大規模な選挙バイアスを確認した.バイアスの構成では,議席定数の不均衡配分よりも死票によるものが大部分を占めている。また,多党制では政党規模が相対的に小さくなり,全選挙区で立候補者を擁立できないため,各政党は効率的な立候補者の擁立を図り,立候補者の有無によるバイアスが,死票を見掛け上少なく抑えている.これらのバイアスを介して,多党化の地域差は,議席定数の不均衡配分の効果と合わさり,「大都市圏」一「非大都市圏」間で1票が議席に与える影響力の格差を拡大している.