地理学評論 Ser. A
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北海道知床半島に発生する局地的強風の気候学的研究
佐川 正人
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2000 年 73 巻 8 号 p. 621-636

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抄録

北海道知床半島の羅臼付近では,北西からの局地的な強風の吹走することが知られている.その強風に対しては「羅臼だし」などの呼称で呼ばれる.しかし,羅臼とその周辺における,風向・風速の差異ならびに,強風の発生時期等がこれまで明らかではなかった.今回,この北西よりの強風が吹き越えてくると想定される知床峠など半島鞍部の気象観測資料をもとに,これと知床半島周辺のAMeDAS資料,根室の高層観測資料などを併せて,羅臼付近に吹走する強風を中心に解析を試みた.
その結果,(1)知床半島のオホーツク海側と根室海峡側を比較すると明らかに風に関する性格が異なり,オホーツク海側よりも根室海峡側で風速が大きい,(2)同じ根室海峡側においてAMeDAS標津よりも,知床半島を構成する山列に対しほぼ直交する谷口に位置しAMeDAS羅臼のある羅臼市街地付近では,とくに強風である,(3)知床峠とAMeDAS羅臼の風速には強い相関があり,加えてAMeDAS羅臼において強風が生じている場合,根室の上空700~900hPa面に逆転層の最下層面が現れている,ということがわかった.この事実から「羅臼だし」を含む羅臼付近での強風の発現は逆転層最下部の高度の影響を受け,発現原因の一っとしてhydraulicjump発生の可能性をあげることができる,などの点を把握できた.

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