Geographical review of Japan, Series B
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日本におけるスキー場とスキー集落
白坂 蕃
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1984 年 57 巻 1 号 p. 68-86

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抄録

わが国の山地集落では,1950年代後半から著しい人口減少がみられた.一方,経済の高度成長によって,山地に対するレクリエーション需要が増大してきた.そしてレクリエーション活動の地域的展開に伴い,既存集落の変貌や新しい観光集落の形成がみられた.特にスキー場の開発による集落の変貌と,新しい集落の形成はその典型である.
筆者は,スキー場がその集落の形成・発展において重要な役割を演じ,スキー場と集落がひとつの複合体として機能する場合を,「スキー集落」と規定した.そして,スキー場の地域的分布の条件を考えるために,日本におけるスキー場の開発過程とスキー・場の地理的分布を明らかにした.さらにスキー集落をその起源により類型化し,スキー集落形成の諸条件を明らかにした.
わが国のスキー場の地理的分布をみると,年最深積雪量50cm以上の地域で,しかも滑走可能期間が110日以上の地域に著しい集中がみられる.これらの自然条件に加えて,スキーヤーの発源地が基本的には大都市であるために,スキー場の立地には交通条件が大きく関与している.また,一般に日本のスキー集落の形成にあたっては,温泉の存在がその発展に大きな条件になっている.さらにスキー場の開発には広大な土地が必要であるため,スキー集落の形成においては,スキー場適地の土地所有形態が重要な要因で,これには共有地の存在が有利な条件となる.
わが国におけるスキー集落は多種多様であるが,筆者は,それぞれの集落の起源や変貌の過程によって日本のスキー集落は基本的に二つに類型化できることを明らかにした.すなわち,第1は,既存の集落がスキー場の開発によって,従来の集落を著しく変貌させた「既存集落移行型スキー集落」である.第2は,スキー場が開発され,地元民の移住などにより,従来の非居住空間に新しい集落が形成された「新集落発生型スキー集落」である.

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