1985 年 58 巻 2 号 p. 165-171
1983年に観測されたブラジル北東部(ノルデステ)の干ばつと南ブラジル(イグアス・パラナ川流域)の大雨をもたらした大気循環について解析を行った.
北部ノルデステ(10°Nより北)地方の雨季は,3月から5月に集中しているので,1983年の4月の大気循環を中心に解析を行った.また,北部ノルデステ地方に雨の多かった1974年についても,4月の大気循環の比較解析を行った.さらに,1891年以降の北部ノルデステ地方の干ばつおよび南ブラジルの大雨とエルニーニョとサウザンオッシレーション(ENSO)との対応について調査した。
1983年の干ばつと大雨を伴った循環は,850mbでは南大西洋高気圧が平年より強くノルデステ地方へ張り出し,この高気圧を反時計廻りに回る北よりの風が,南ブラジル上空の前線帯で上昇し大雨を降らせた.また,観測時代における北部ノルデステ地方の干ばつは,ENSOの年か,その翌年に出現しやすいことがわかった.1983年の大干ばつも1982年から1983年にかけての大きなENSOの後半に観測された.