Geographical review of Japan, Series B
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東京における金融機能の成長
高橋 伸夫
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1990 年 63 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

地域の動態に作用する資金の役割はきわめて大きい。本論は東京が近年国内外の資金をいかに吸引し,都市の内部を変容させるととも,他地域との結合をいかに進めているかを考察しようとする。
東京は全国から資金を吸収し,民間金融機関のとくに貸付機能に特化している。近年,東京都心部は銀行をはじめ金融機関の店舗密度をますます高めつつある。このような都心部への金融機関の極度な集積傾向は,世界の大都市にみられる「シティ (City) 現象」と同様な様相を呈している。すなわち,シティ現象とはロンドンの旧市街のCityのような都心部に典型例が見い出せるように,金融機能や経済中枢管理機能によって,ある地区がひたすら占拠されてゆく過程である。
近年,国内外の資金流動の活発化,金融機関業務の国際化,円の国際化などによって,「金融の国際化」・「金融のグローバリゼーション」が急速に進行し,外国銀行や外国証券会社が東京を中心に日本に進出してきている。
東京のような大都市においては,金融機能と本社機能が中核になって中心業務地区が形成され,貸付空間がそこに明確に画定されうる。一方,近年,副都心が形成され多核的な新たな貸付空間が生じている。同時に,人口の郊外化とともに預金空間は外縁部へ向けて拡大しつつある。東京のような大都市は,それ自身の大都市圏からの資金の吸収にとどまることなく,全国の中小都市から広範囲にわたって資金を吸引するため,二重構造をなす預金空間を有する,さらに,近年,金融の国際化によって,東京のような大都市には世界に広がる金融空間を操作する高次な金融機能が集積し,三重構造をなす金融空間が形成されている。
東京における国内外の金融機関の極度な集積は,地価の高騰をはじめとした都市問題を引き起こすとともに,都心部の再開発や東京湾岸のウォーター・フロントの利用などにみられるように,都市計画の施行を回避できない状況に至らせている。

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