Geographical review of Japan, Series B
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東京大都市圏南部における農業所得型の変化
神奈川県の事例
内山 幸久
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1990 年 63 巻 1 号 p. 60-72

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抄録

東京大都市圏南部に位置する神奈川県では都市化・工業化が進み,都市的産業に従事する人が増加してきた。神奈川県の人口は国勢調査によれば1960年に3,443,162人であったのが,1985年には7,431,974人となった。人口増加とは逆に農家数や農家人口が減少し,特に農家人口はその25年間に50%以上の減少率を示した。また耕地面積も25年間に54.7%の減少率を示し,多くの農地が都市的土地利用に変わってきた。しかしその中で三浦市は東京への通勤圏内に位置するにもかかわらず,耕地面積の減少は少なく,スイカ・ダイコン・キャベツの産地となっている。一方,果樹園は1960~75年に増加したが,その後その面積はわずかに減少した。果樹園の多くは温州ミカン園であり,温州ミカンは県西部の山麓傾斜地で多く栽培されている。
神奈川県では乳牛や豚や採卵鶏の飼育農家数は1960年以降減少してきたが,家畜飼育頭羽数は1975年以降あまり変化せず,農家の家畜の生産性が増加してきた。
1960~85年の農業粗生産額により,各市町村における農業所得型をみると,県東部から中央部にかけての都市化が激しい地域では,野菜類を第1位とする市町が増加してきている。また,県西部では果樹類を第1位とする市町が増加してきている。さらに県の東部から中部にかけて花卉類を農業所得型に含む市町が増加してきた。さらに県西部では植木苗木類を農業所得型に含む町村が近年に増加してきた。一方,県の東部から中部にかけて,農業生産の型に乳牛・豚・採卵鶏を含む市町が増加してきている。生産された農産物の多くが東京大都市圏の市場で販売されている。

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