Geographical review of Japan, Series B
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東京の都市水文
新井 正
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1990 年 63 巻 1 号 p. 88-97

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抄録

都市の人工的な地表面や地中構造物は,地下水・河川などの水の循環を変化させる。都市の拡大により,この変化は広い地域に及ぶようになる。水収支・水量の変化に加えて,水質の悪化が都市水文のもう一つの要素になる。
東京の河川は低地部の河川と,台地部の小河川に分けられるが,特に後者に都市化の影響が著しく現れる。地下水位の低下により小河川の水源が枯渇し,水質の悪化をももたらす。地下水位の低下の原因は,コンクリートなどによる雨水浸透の減少,地下水の揚水,下水道や地下道への地下水の流入などにある。一方,上水道からの漏水が地下水を補給している。これらは土地利用の変化と密接に関係しているので,土地利用の変化と流出率とを基礎にして,東京の水収支変化を推定した。その結果,特に1960年代に収支の悪化があったことが推定された。
東京の小河川の水源である湧水の分布を調査した結果,武蔵野台地の中央部や低い崖にそう湧水の多くは既に枯渇し,武蔵野礫層を切る高い崖にそう湧水のみが活発であることが明らかになった。湧水は,小河川の水質のみならず,景観の保全にも役だっている。

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