アフリカの人口移動研究の中では,人口移動をより広い政治経済的文脈で分析しようとする傾向が強まりつつある。この研究では,人口移動を経済的政治的変化の一徴候を表すもの,あるいはその変化に対する人々の対応の一つの現れを示すものと見る。ポリティカル・エコロジー的視点は,この研究目的のために有効であり,また1970年以降前例のないほどの好況と不況を経験してきたナイジェリア経済は,調査地として適切なものである。
家族や血縁グループのネットワークが,人々の移動に重要な役割を果たしていることが明らかになった。そしてそれが, 1970年代の経済好況期には,人々を農業から非農業労働ヘシフトさせ,農村から都市部への移動を促し,高等教育への就学を促進した。経済不況以降は,それは都市部で若年者が何らかの仕事に就くことを助けた。もっともそれは都市インフォーマル部門のそれであった。またそれは若年失業者を農村に届あ置くことにも役立った。これらのことは,人々が急激な経済変化に適応するにあたって,人口移動がどのような機能を果たしているのかを示している。