本稿では,広島県を事例として,最近20~30年間における地域的都市システムの構造変化を考察した。その際にはとくに,中小都市間の水平的結合の存在とともに,低次中心地の機能変化に注目した。その結果,過去20~30年間に広島大都市圏が著しく成長し,他地域との地域間格差が拡大してきたことが判明した。しかも広島は,高次中心地,特に福山との機能的結合を強化してきた。しかしながら,広島の急激な成長と狭小な県域のため,県内中小都市相互の水平的結合はそれほど発達しなかった。欧米諸国では低次中心地は農村地域の豊かなアメニティのもとで成長しているといわれるが,広島県では低次中心地の大部分は不利な生活条件のもとで,今日まで衰退またはせいぜい停滞してきた。しかし,低次中心地のなかにも,吉田や上下などのように,小規模ながらも自己の通勤圏をもつものがあり,これらの中心地が成長することは過疎地域の生活条件の改善に大きく貢献するものと考えられる。