地理学評論
Online ISSN : 2185-1727
Print ISSN : 1347-9555
ISSN-L : 1347-9555
日本の条件不利地域におけるルーラルツーリズムの可能性と限界
長野県栄村秋山郷を事例として
大橋 めぐみ
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 75 巻 3 号 p. 139-153

詳細
抄録

本研究では,日本の条件不利地域における小規模なルーラルツーリズムの可能性と限界を明らかにするため,長野県栄村秋山郷の事例を取り上げ,ツーリズムの需給構造ならびにツーリズム資源となるルーラルアメニティの保全との関連に注目して検討した.秋山郷を訪れるツーリストは,ルーラルアメニティを構成する要素のうち自然的・文化的要素への関心が高く,リピーターを中心に満足度も高い.しかし,農業的要素への需要は十分満たされていない.地域住民は,農業や建設業との複合経営の一環として,低コストで小規模な宿泊施設を経営してきたが,近年は経営の維持が困難となっている.こうしたツーリズムは文化的要素の維持には貢献してきたものの,農業的要素の維持には結び付いてこなかった.ルーラルアメニティの劣化はツーリズム自体の存立を脅かすものであるが,その保全のためにはツーリストやツーリズムに携わる住民のみでなく,地域住民全体を含めた保全の枠組が必要である.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top