地理学評論
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ラオス北部焼畑山村にみられる生計活動の世帯差
幹線道路沿いの一行政村を事例として
中辻 享
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2005 年 78 巻 11 号 p. 688-709

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抄録

ラオス北部の山岳地域では現在も焼畑による自給向けの陸稲栽培が盛んに営まれているが,その一方で焼畑民による現金収入を目的とした仕事も活発化している.その結果,世帯間で異なる生計活動がみられる.本稿はこの生計活動の世帯差とそれが生ずる要因を,集落移転政策によって成立した一行政村,10番村を事例として,各世帯の稲作規模やコメ収支,現金収入の分析を通じ考察した.その結果,10番村では市場経済の浸透後,経済格差を生む新たな要因が生じ,貧富の差とそれに伴う生計活動の世帯差が明瞭にみられること,10番村における貧富の差は民族間の経済格差の問題を含んでおり,焼畑民の貧困問題をこの問題抜きに論じられないこと,幹線道路沿いの領域では土地に対する人口圧が高まり,焼畑の継続が困難になり始めているのに対し,山間僻地領域では人口圧が低く,焼畑が今なお継続しやすくなっていることを明らかにした.

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