2005 年 78 巻 14 号 p. 976-986
ドイツにおける農家民宿の研究は,その発展に向けた経営や立地条件などの解明を目的として展開した.本研究では,農家民宿が成熟期にある地域,バイエルン州南部のバート・ヒンデラングを取り上げ,近年の農家民宿の動向,とりわけ経営分化を把握し,その要因を明らかにした.農家民宿が成熟期にある地域では,農家民宿が離農して宿泊業専業となる傾向にある.その中で,農業維持を実現する農家民宿では,貸部屋から貸別荘への移行が顕著にみられ,現在の経営形態として貸部屋,貸別荘,それらの併設の3類型が確認された.これら3類型への分化の主要因として,家族内の労働力の多寡,後継者の有無,需要の変化が挙げられる.