地理学評論
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地理学におけるシミュレーション
野上 道男
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2005 年 78 巻 3 号 p. 133-146

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抄録

地図は現実世界のモデルである.したがって地図上で行われるすべての営為は広義のシミュレーションと呼ばれてしかるべきである.このような地理的シミュレーションは地図のデジタル化,GISによって改新された.私の以前の研究から,日本列島における植生の帯状分布に関する地理的シミュレーションを事例として取り上げた.1km解像度の植生と気候のグリッドマップを用いて,常緑広葉,落葉広葉,常緑針葉,高山低木などの天然森林帯を分ける熱的閾値を求めた.これらの値を使い,人間活動によって本来の植生が失われた場所の潜在植生を推定し,また気温が7°C低下した気候,2°C上昇した気候下における潜在植生を推定した.現在の地理的分布とそれを決めている制約要因の空間的相関は,過去の鍵であると同時に未来の鍵でもある.さらに他の分野と共通する意味の,すなわち狭義のシミュレーションを私の以前の研究から事例として二つ取り上げた.一つは小流域の地形発達に関するものである.流域は斜面と河川プロセスの領域に2分割され,異なる発展方程式(時間を含む偏微分方程式)をモデルに採用した.このスキームを採用したことで,二次元モデルに,岩石制約と気候的影響をセットにして拡散係数として,また海面変化を境界条件として組み込むことができた.これからの10万年はこれまでの10万年と同じ気候変化や海面変化があるという仮定の下で,正六角形DEM上でシミュレーションを行った.もう一つの事例は排水網の確率的モデルに関するものである.排水網ネットワークシステムは基本的に二分木である.シミュレーションモデルは再帰関数群から成り,一つは乱数によって新しい分岐を発生させて(モンテカルロ法)水路網を作り出す.もう一つは水路網の特性(流域面積,ホートン・ストレーラの次数,分岐比など)を計算する.シミュレーションという用語によって,地理学は何であるか,地理学とはどのようなものであるかを語ることが,地理学を広く知ってもらう最良の方策であると思っている.なぜなら科学はその予知能力によって評価されるからである.

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