地理学評論
Online ISSN : 2185-1727
Print ISSN : 1347-9555
ISSN-L : 1347-9555
集団の空間的流動性からみたアイヌ集落の持続的な血縁関係-1856~1869(安政3~明治2)年の東蝦夷地三石場所を例に
遠藤 匡俊
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 79 巻 11 号 p. 547-565

詳細
抄録

狩猟採集社会の集落でみられる集団の空間的流動性には,紛争処理機能が備わっていると考えられてきた.本研究では,1856~1869(安政3~明治2)年の東蝦夷地三石場所におけるアイヌを対象として,集団の空間的流動性の程度を測定し,流動性の機能を集落内居住者間の血縁親族関係の維持という側面から検討した.その結果,集団の空間的流動性は分裂の流動性と結合の流動性に二分された.後者では流動性が高くとも分裂してこなかった家を含む集落が多く,集団の流動性は紛争処理理論のみでは説明できないことがわかった.集落の構成が流動的に変化していたにもかかわらず,集落内の家と家は親子,兄弟姉妹関係にあることが多く,つねに血縁親族関係を主体として集落が形成されていた.集団の空間的流動性には,同じ家で暮らした親子,兄弟姉妹が結婚を契機に居住集落を異にした後になっても,それぞれが移動することによって再び同じ集落で暮らそうとする,いわば血縁共住機能が備わっていると考えられる.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
次の記事
feedback
Top