地理学評論
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日本の地理学における言語資料分析の現状と課題
地理空間における言葉の発散と収束
成瀬 厚杉山 和明香川 雄一
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2007 年 80 巻 10 号 p. 567-590

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抄録

近年, 日本の人文地理学において, 言語資料を分析する研究が増加しつつある. 本稿では, そのような論文を方法論的な観点から批判的に検討することを目的とする. まずは日本の地理学における言語資料分析を概観し, 言説概念の英語圏地理学への導入・批判を紹介することを通じて, 地理学研究で言語の分析をすることの意義を探求した. 人文地理学における言語の分析は, 単に新たな研究の素材の発掘や量的分析を補完する質的分析にとどまらない可能性を有している. それは, 社会を根源的に見直す概念となり得る. 現在の研究に不足しているのは, 言語資料の分析方法に関する詳細な検討, 関係する主体のアイデンティティの問題, そしてその言葉の生産過程における政治性への認識, である. 地理学的言説分析とは, 生産された言葉が発散するように地理空間に流通し, それを人々が消費し, 解読することによって, 意味的に収束させていく過程を分析し, また同時に, その意味的収束において発信者と受信者のアイデンティティと記述要素としての地理的要素との関係を論じていくことである.

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