日本の都市内部構造は, 1970年代後半以降, 都心の盛衰と郊外の消長によって, 形態的な多様性を増してきた. そこで本稿では, 都市内部構造の多様化とその要因を明らかにすることを目的とする. 手法としては, 地域メッシュ統計を利用して157の都市地域を取り上げ, 1981~2001年にかけての従業者密度分布の変化を分析した. この分析の結果は, 以下の5点にまとめられる. 第1に, 日本の多くの都市では, 1990年代以降, AD (Agglomeration District) の空洞化が一般的な傾向となり, 下位階層の地方中小都市ほどADからの従業者の流出が進んでいた. 第2に, SD (Suburban District) の拡大は, 1980年代からすでに多くの都市で一般的な傾向となっていた. 第3に, 下位階層の都市ほど相対的なADの密度低下が進む傾向にあり, 都市間の格差が拡大していた. 第4に, 国土の中核部の都市ではADの空洞化とSDの拡大が著しいのに対して, 周縁部の都市の内部構造は安定的であった. 第5に, 早くからダウンサイジングが進んだ都市のいくつかに再集中化傾向が生じているのが確認された.