岩手県岩手山南東麓の春子谷地湿原において5地点のボーリングを行った. コア試料の14C年代測定およびテフラ分析, 花粉分析の結果から, この湿原周辺における約13,000年前以降の植生変遷および気候変化を検討した. この湿原は秋田駒柳沢テフラ (Ak-Y) の上に, 泥炭からなる湿原堆積物が堆積する. 湿原堆積物には, 下位より秋田駒堀切テフラ (Ak-HP), 十和田aテフラ (To-a), 岩手刈屋スコリア (Iw-KS) が挟在する. 湿原周辺では, 約13.4~13.0kaにはカバノキ属の森林とコナラ亜属を主体とする冷温帯性落葉広葉樹林が分布し, 冷涼な気候であった. 約13.0~10.5kaにはカバノキ属の森林から冷温帯性落葉広葉樹林となり, 次第に温暖化した. 約10.5~1.4kaにはコナラ亜属が優占する冷温帯性落葉広葉樹林となり, ほぼ現在と同様の温暖な気候になった. その後, 約1.4~0.2kaになるとスギ林が, 約0.2ka~現在にはアカマツ二次林やスギ植林が拡大した.