宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
会議情報

Type IIダイヤモンドの結晶が不規則、平板状の形を示す理由
砂川 一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 1

詳細
抄録

天然ダイヤモンドの大部分は、丸味を帯びた八面体や十二面体の結晶として産する。このため、ラウンドブリリアントカットが主たるカットスタイルとなる。一方、不規則、あるいは平板状の形で産するものも少数あり、原石選別の段階でこれらは一つのグループとしてわけられる。形で選別した上でUV透過率、IR分光法でチェックすると、これらは全てType IIであることが明らかになり、以後Type IIの選別には形を基準とすることになった。なぜType IIが不規則、平板状の形をとるかについては、いくつかの意見があり、Wilks and Wilks(1991)は次の4つのメカニズムを紹介している。(1)a)地下で破断された、b)採掘中に破断された、(2)マグマ中での熔解速度が方向により異なるため、(3)共存する固体鉱物粒子の隙間で成長したため、(4)不純物窒素の吸着でType Iは八面体になるのに対し、窒素を含まないType IIは自由成長して不定形となる。Type IIの示す不規則、平板状の形の原因についてはまだ定説に達していないというのが現状である。2000年にダイヤモンド会議に出席したおり、MaidenheadのDiamond Research Center、およびLondonのSorting Roomを訪問し、Type IIとして選別された原石多数、およびX線トポグラフ多数をチェックする機会にめぐまれた。不規則、ないし平板状を示す原石には平らな結晶面はまったくみられず、表面は鈍くかつ湾曲している。不規則な形ができて以後微弱な溶解作用を経験していることがわかる。X線トポグラフはType Iのそれと大幅に異なり、ゆるく湾曲したドメインで構成されている。そのため、回折像を示す領域と、まったく示さない領域で構成されているのが特長である。Type Iに特徴的にみられる転位束や成長縞はみられない。これは塑性変形に起因する格子欠陥がsuperimposeしているためである。Type IIは偏光下で歪み複屈折、tatami-matパターンなど塑性変形に特徴的なパターンを示す。Type Iが炭素と窒素の合金に対応するのに対し, Type IIは純炭素に対応する。同じ応力を受けたとき、合金のほうが塑性変形しない。塑性変形がさらにすすむと、破壊がおこる。地下深部から運びあげられる過程で、Type I, II両者が同じ応力を受けても、Type IIだけが塑性変形し、さらに破壊されると、もともとおなじ形をしていた結晶も、一方は成長時の形を維持したままで生き残るが、他方は破壊されて不規則、ないし平板状の形をとるようになる。この形になって以後もマグマ中に存在すると、溶解を受ける。Type IIの特徴的な形はこのようにして生まれたものである。(Ib)、(2)、(3)、(4)などによるものではない。GE POLダイヤモンドの80%以上がファンシーカットされる理由も原石の形の特徴による。なお、マイクロダイヤモンドでは、両タイプとも八面体を示し、両者でas grownの形には差がないことが、Tolansky & KomatsuのUV写真には明瞭に示されている。

著者関連情報
© 2001 宝石学会(日本)
次の記事
feedback
Top