宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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鶴天、草食性動物の歯で作られた緒締め
砂川 一郎高橋 泰木村 郁子寒河江 登志朗
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p. 15

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抄録

緒締めとは印篭と根付けをつなぐ紐をとうして紐締めとしてつかわれる小型の装飾品で、根付け同様多くの愛好家がいる。根付けに比べると、小型であることから、素材の制限は少なく、珊瑚、象牙、琥珀、牛の角、ツゲ、七宝、金属、陶器、ガラス、孔雀石、などさまざまな素材が使われている。中でも、鶴天と呼ばれる朱色のまだら模様をもつ緒締めは、鶴の冠と信じられ、格別に高く評価されていた。可能性として、絶滅種の犀鳥の持つ象牙質の冠が想定されていたためであろう。木村が所有する鶴天について比重、屈折率を測定した結果、既知のいずれの象牙質材料のデータとも一致せず、また染色されていることが明らかになった。染色されている組織とされていない組織があり、染色されている組織は多孔質、されていない部分は光学顕微鏡レベルで無組織であった。そこで、両組織の顕微鏡観察とマイクロFT-IR分光分析を行った。その結果、染色されている部分は動物の歯の象牙質の部分に、染色されていない部分はエナメル質の部分に相当することが明らかになった。象牙質、エナメル質部分の分布で生まれる歯の組織の特徴は草食性、肉食性動物で異なり、試料は草食性動物の歯の特徴を示している。しかし、動物種を同定するためには、薄片で組織の特徴を調べる必要があり、これは実行できなかったが、草食性動物の歯を球形に整形し、染色したものであると結論された。

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