宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
会議情報

熱処理したダイヤモンドの発光特性
神田 久生
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 2

詳細
抄録

ダイヤモンドに電子線や紫外線を照射すると蛍光を発する。発光の測定は、不純物や欠陥を知るための一つの方法であり、微小領域を高感度で簡便に測定できるという利点がある。しかしながら、測定で得られるスペクトルの情報から直接に、不純物の同定や、定量分析を行うことは困難である。発光測定を分析手段として、より強力にするには、発光スペクトルと不純物·欠陥との関連についての知識を集積するのが一つの方法である。本研究では、Ib型の合成結晶を熱処理したものについて、カソードルミネッセンス、フォトルミネッセンス測定を行った。その結果、N3, H3, 575nm発光ピーク強度に窒素濃度との相関が認められた。この結晶では、窒素濃度にセクター依存性あり、{111}セクターで50ppm, {113}セクターで10ppm以下であった。N3発光ピークは窒素濃度の高い{111}セクターで強く、H3, 575nmピークは窒素濃度の低い{113}セクターで強いという傾向があった。この傾向が一般的なものであれば、N3, H3の発光強度から窒素濃度が高いか低いかを知ることができよう。天然ダイヤモンド結晶では結晶断面に、成長縞に対応する発光の不均一がみられることが多い。一つの天然結晶の断面について発光分布を観察したところ、熱処理によって発光分布に大きな変化がみられた。熱処理前は発光の弱かった場所が、熱処理後には、H3の発光が強くなった。上のH3発光強度と窒素濃度との相関を適用すると、このH3発光が強くなった場所は、窒素濃度が低いといえる。本研究での熱処理は、ダイヤモンド高圧合成用の高圧発生装置を用いて、6万気圧、1800°Cの条件で行った。結晶は黒鉛粉末の中に埋めて加熱した。この温度では、空孔や単原子窒素は結晶内を拡散できる。また、結晶自身、塑性変形する。発光特性の変化はこのような挙動の影響の結果である。

著者関連情報
© 2001 宝石学会(日本)
前の記事 次の記事
feedback
Top