宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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セプター·クォーツのタイプ分けと成因の考察
高橋 泰今井 裕之保坂 正博砂川 一郎
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p. 5

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抄録

セプター·クォーツ(松茸状水晶)は基部よりも頂部が大きく成長し、傘状になった水晶の総称である。世界中から産出が報告されているが、その成因についての研究は非常に少ない。発表者等はここ数年、成因を探るために天然の水晶の観察と合成実験を試みてきた。その結果、セプター·クォーツ発生の要因はマスキングと結晶成長の条件変化であることを見出した。そこで形状等により、天然のセプター·クォーツをタイプ分けし、それぞれの成因についてモデル化を試みた。対象としたのは、マダガスカル、ブラジル、メキシコ、中国、国内では岐阜県神岡鉱山、長野県川上村、麻績村産の実物といくつかの写真資料である。セプター·クォーツの多くに見られる共通の特徴は、次の通りである。
a.傘状部分の両錐結晶と基部の結晶は方向が同じであり、合せて一つの単結晶である。
b.基部はインクルージョンが多い不透明な結晶か、ミルキー·クォーツである。
c.傘状部分はインクルージョンが少ないクリアーな結晶で、時にアメシストやスモーキー·クォーツとなっている。
d.傘状部分の柱面には条線がほとんど見られない。
e.群晶中で傘状部分の有無がある場合、無い水晶はセプター·クォーツよりも小さいものが多い。
セプター·クォーツは大きく分けて次の5タイプがあり、それらがさらに複合して千変万化する。
1. 傘状部分が錐面と柱面を覆う短柱状の両錐結晶であるもの。
2. 傘状部分が錐面と柱面を覆う長柱状の両錐結晶であるもの。
3. 傘状部分が錐面の一部分を覆う短柱状の両錐結晶であるもの。
4. 傘状部分が柱面を覆う長柱状の両錐結晶であるもの。
5. 傘状部分が柱面を覆う短柱状の両錐結晶であるもの。
1∼4のタイプは全てマスキング部位の変化と各結晶面の成長速度変化により説明がつく。マスキング部位の移動は傘状部分の形状や大きさ、発生場所を変化させていると思われる。マスキング部位が様々である理由は産状にも由来する。長野県麻績村では砂岩中の石英脈に群晶として産し、中でも大きく成長する結晶の多くは狭い脈状の空隙に対し、垂直方向ではなく低角度をなして成長している。このことがマスキング部位のパターンを複雑にし、母結晶に対し傘状部分は様々なパターンを見せる。各結晶面の成長速度は傘状部分で大きく変化し、マダガスカル産サンプル例では、柱面方向とc軸方向の成長速度比は1:2.5であり、天然水晶の1:4∼9(実測値)よりも合成水晶の1:2∼5(実測値)に近いものである。5のタイプはマスキング部位と選択的なエピタキシャル成長による影響が大きいものである。中でも、岐阜県神岡鉱山産のサンプルには柱面がほとんどない両錐の傘状部分が、結晶全面を被覆するように発生しており、特に頂部と柱面同士のエッジに大きな傘状部分が発生し、しかも群晶中ではほとんどが一方向側に発達している。この選択的な成長は傘状部分成長時に溶液の流れがあり、成分の供給に偏りがあったことを示している。

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