宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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ターフェアイトおよびマスグレイバイトの組成について
田端 英世中村 和雄川上 省二
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p. 8

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抄録

ターフェアイトは発見された当初(1940年代)、クリソベリル(BeAl2O4)とスピネル(MgAl2O4)が、等モル比で化合した鉱物と考えられていた。その後、多くの標本について化学分析が行われた結果、ターフェアイトとは異なる組成の鉱物が確認されマスグレイバイトと命名されている。現在までのところ、これらの鉱物の理想組成はターフェアイトがBeO·3MgO·4Al2O3、マスグレイバイトがBeO·2MgO·3Al2O3と考えられてきた。しかしながら、これらの天然鉱物には、かなりの量の遷移元素などが固溶しているため、それぞれの鉱物の理想組成については疑問が残る。そこで、これらの鉱物の組成を確定するための実験を行った。クリソベリルとスピネルの粉末を種々のモル比で混合して調製した焼結棒をシードとして、フローティングゾーン(FZ)法で結晶育成を行い、得られた結晶棒を輪切りにして偏光顕微鏡で観察するとともに、X線回折によって存在する結晶相の同定を行った。また、クリソベリルとスピネルの粉末をペレット状に成形した試料を1300∼1700°Cの温度で固相反応させ、得られた結晶相をX線回折によって同定した。FZ法では、BeAl2O4/MgAl2O4が1/1のとき、クリソベリルとマスグレイバイト(9R相)が共存し、7/9の場合には9R相と極微量のターフェアイト(4H相)が認められた。3/5の場合には、ほとんど単一での4H相となり、1/3ではスピネルと4H相が共存していた。固相反応の結果は、いずれの組成においても4H相は検出されなかったため、純粋なターフェアイト(4H相)は1700°C以下の温度では安定に存在しないと考えられる。3/5の組成の場合においても9Rとスピネル相のみが検出された。7/9の組成では、ほとんどが9R相であって、極微量のスピネルが認められた。以上の実験結果をまとめると、BeAl2O4-MgAl2O4疑二成分系において図に示すような相図が得られる。また、ターフェアイト(4H相)とマスグレイバイト(9R相)の不純物を含まない状態での組成は、それぞれ3BeO·5MgO·8Al2O3および4BeO·5MgO·9Al2O3であることが明らかとなった。

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