宝石学会(日本)講演会要旨
平成15年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 1
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ダイヤモンドのリ・カットとカラーグレード(第2報)
*矢野 晴也
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抄録

ブリリアントJットされた石をある特定な形状にリJットするとJラーグレードが変化した事例については、前回の本学会で報告した。
円形ブリリアントJットをリJットし、そのカット・グレードを改善する試みは一般に広く行われており、これによるカラーグレードの変化が問題になることが多い。
今回はこれに問題を絞って論ずることとする。
リ・カットの主要目的は、言うまでもなく、カット・グレードの向上であろう。即ち、下位のグレードをより上位のグレードにする事である。good或いはvery goodを最終的にexcellentのプロポーションにする事である。このことにより、当然カット形状、即ちプロポーションは変化し、その中を通過する光の経路も変化することになる。この事の結果として、当然この石の見かけ上の色は変化することになる。この光の経路長と吸収量の関係は、前回示したごとくランバート・ベールの法則、
I=Ioexp(-μL)
Io:入射光強度、I:透過光強度、L:透過距離、μ:吸収係数
で示される。すなわち、ダイヤモンドの色はそれが本来的に持つ光を吸収する性質μとカットにより支配される光の透過距離Lの複合効果である。従ってLとμが分かればこの色や変化の度合いはある程度予測できることになる。前回報告した通りである。通常カラーグレーディングを行う際には、パビリオン側からガードル面に平行な方向で観察するが、この場合の光の経路が具体的にリ・カットの前後でどのように変化するのかを求めれば、色の変化度合いの予測がある程度可能となるはずである。
具体的な事例につき検討したので報告する事としたい。
結論として
1.宝石用ダイヤモンドの色はその石の光を吸収する性質と光の透過経路の長さの複合効果である。
2.従って、リ・カットにより、そのカラーグレードは変化する可能性がある。
3.変化の度合いは、定性的にはともかく、定量的にその詳細を言う事は困難である。ただ、通常のカラーグレードの範囲(E~J)においてはおよその推測は可能である。
4.一般論として、ブリリアント・カットを薄くすることでカラーグレードは改善されるであろう。逆の場合は悪くなるであろう。
5.参考までに、ガードル部の汚れは、カラーグレードに大きく影響を及ぼすであろう。

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