宝石学会(日本)講演会要旨
平成17年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 4
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ラボにおける最近話題の宝石
*岡野 誠北脇 裕士
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抄録


宝石鑑別ラボラトリーにおける最近話題の宝石について報告する。
◆ブラック・ダイヤモンド
1990年代後半からブラック・ダイヤモンドがジュエリー素材として注目を集めるようになった。これらは当初、天然のブラックであったが、いつのまにか照射処理石に取って代わり、その後高温加熱(HT)処理ブラックが台頭するようになった。照射処理石はその透過光の色(緑~青)で容易に識別することができる。加熱処理ブラックは慎重な内部特徴の観察によって看破できるが、場合によってはHPHT処理の看破と同様にフォト・ルミネッセンス分析が必要となる。
◆鉛ガラス含浸ルビー
昨年の上半期から鉛ガラスが含浸されたルビーを見かけるようになった。これらは透明度の改善を目的にしたもので、単に加熱に伴う残留物ではない。鉛ガラスの含浸処理が行われたルビーは、たいていフラクチャーに特有のフラッシュ効果が見られる。レントゲン写真を撮ると含浸されたフラクチャーは鮮明に映し出される。時にフラッシュ効果が認められないスター石などもあるが、このようなケースの最終的な判断には蛍光X線分析による鉛の検出が最も有効である。
◆紫色の宝石素材
紫色の宝石はJJAの2005年イヤー・カラー・ストーンである。これにちなんで珍しい紫色の宝石変種を紹介する。パープル・カルセドニーはインドネシア産の新種の宝石で、スティヒタイトはスギライトに外観が酷似した炭酸塩鉱物である。紫色のトルコ石は“加熱による”ナチュラルJラーとして販売されていたが、実際には着色されたものであった。さらにCermikiteは魅力的な紫色の結晶であるが、水溶液から育成された人工結晶である。
◆長石類の宝石変種
長石類の宝石素材として、ムーンストーン、サンストーン、ラブラドーライト、アマゾナイトなどが良く知られている。最近ではこれらにアルバイト、アンデシンなどの新しい変種が見られるようになった。タンザニア産の青白いシーンを示す長石の変種はしばしばムーンストーンとして誤称されているが、これらはアルバイトとオリゴクレースの組成を持つ2成分の微細なラメラ構造を有する“ペリステライト”である。

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© 2005 宝石学会(日本)
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