宝石学会(日本)講演会要旨
平成17年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 7
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LA-ICP-MS分析法による宝石の産地鑑別
*アブドレイム アヒマディジャン北脇 裕士古屋 正司
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抄録


 宝石の地理的地域の産地鑑別はそれを行うそれぞれの鑑別ラボの意見であり、その宝石の品質や価値を示唆するものではない。このことはCIBJOのルールにおいても基本理念となっている。産地鑑別は、宝石鑑別機関の独自に収集した既知の標本との比較、現時点での継続的研究の成果および文献化された情報、蓄積された科学的データあるいは経験に基づいて行われている。各種宝石の産地鑑別をより高い精度で検査するために蛍光X線分析、分光分析、レーザー・トモグラフィなどが有効に利用されている。これらの手法は主に生成起源によって異なる微量元素や成長履歴の相違に注目したものである。さらに筆者ら(阿依、北脇)はレーザー・アブレーション(LA) -誘導結合プラズマ(ICP)-質量分析法(MS)に着目し、宝石鉱物の化学組成及び微量元素~極微量元素分析への応用研究を行ってきた。
 本報告ではLA-ICP-MS分析法を用いた超微量元素分析を行い、それらの種類や含有量および組み合わせ等から、コランダム、エメラルドおよびトルマリンなどにおける地理的産地鑑別への可能性について検討した。
(1) 非玄武岩起源の大理石岩、変成岩に関連したルビー;ミャンマー(Mong Hsu, Mogok)、スリランカ(Ratnapura)、パキスタン(Nangimali/Kashmir)と玄武岩起源に関連したルビー;ケニヤ(John Soul)、マダガスカル(Vatomandry)、タイ(Borai)、タンザニア(Songea)の微量分析では、Cr2O3wt%/Ga2O3wt%とFe2O3wt%/TiO2wt%を用いた”Chemical Finger Print”において両起源のルビーが明瞭に区別できる。さらに超微量元素の種類及び含有量によって同産状起源ルビーの特異な差が見られる。
(2) ペグマタイトに関連したエメラルド;ナイジェリア(kaduna)、ザンビア(Ndola Rural)、ジンバブウェ(Sandawana)、ブラジル(Itabira-Nova)とペグマタイトの介入を伴わないエメラルド;ブラジル(Santa Terzinha)、パキスタン(Swat)、アフガニスタン(Panjishir)及びコロンビア(Cordillera)産などの化学的な特徴は(Cs2O+K2Owt%)VS(FeO+ MgOwt%)の濃度分布によって相違が見られる。
(3) ブラジルのParaiba,およびRio Grand do Norte産のいわゆる“パライバ・トルマリン”と同色を示すナイジェリア, Edeko-Ilorin産トルマリンの識別は蛍光X線レベルの分析では極めて困難である。LA-ICP-MS分析による超微量元素Pb-Ga-Geの三角ダイアグラムでは、ブラジル産トルマリンはGaを富んだ領域に、ナイジェリア産トルマリンはPbを富む領域にプロットされることが分かった。

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© 2005 宝石学会(日本)
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