宝石学会(日本)講演会要旨
平成18年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 3
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ディギング・アウトとペインティングについての考察
矢野 晴也
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抄録

円形ブリリアント・カット・ダイヤモンドについてのカット評価基準が、米国GIAの基準に合わせ、我が国においても改定され、本年4月から施行されている。この中で、ガードル部についてディギング・アウトとペインティングの概念が判定基準の一つとして取り入れられた。〈BR〉 本来三次元構造体であるカットの判定は三次元的な観点から行われるべきであり、このことについては、既に1997年の本学会で取り上げ、ガードル部の重要性について報告しておいた。今般の上記概念が判定基準に正式に取り上げられたことは一つの大きな進歩であり、歓迎すべきであると考えられる。そこで、前回の報告をさらに敷延することで今回定められた基準を検証することとする。
 円形ブリリアント・カットのガードル部は16の山と谷で構成される波を打っている。本来ならばこの山と谷の厚さはそれぞれに均等であり、全ての山と谷はそれぞれテーブル面に平行な同一平面上に位置し、規則正しい波動を示していなければならない。ディギング・アウトとペインティングがなされていると、前者の場合には一部の山が低くなり、後者の場合には厚くなる。即ちガードルが規則正しい波動を示さなくなる。大波小波あるいは不均一な波を打つことになる。
 この結果として、ガードル部に直接接する上下のガードル面の傾斜とその方位がそれぞれに変化し、光学的効果も当然変化する。また石の体積も多少の変化を示す事になる。これら諸効果をもたらすが故に、ディギング・アウトとペインティングが基準に取り入れられた訳であるが、評価の実施に際しては、現行の目視による判定方法にやや曖昧な点がある。例えば一部のガードル厚さが他と比較して大きいと測定された場合、それがクラウン側に起因するものか、パビリオン側に起因するものかは、現行法では目視に頼らざるを得ない。またガードル部にエキストラ・ファセットが存在している場合には正確なガードル厚さが測定出来ない事になる。これらの難点を克服回避してより正確なガードルの状況を把握する事が必要である。これらのことから、より客観的な評価について試案を申し述べてみたい。先に述べた如く、上下ガードル面の傾斜角と方位角はガードルの厚さの変化により一意的に変化し、しかもこれらの角度は現在の計測装置、ダイヤメンションなど、で計測表示されているので、これらの数値を加工し間接的ながらガードル厚さの変化を知ることが可能な筈である。この計算方式と判定方法について報告する。
 光学的な効果や歩留まりへの影響についても付け加え報告する。

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