宝石学会(日本)講演会要旨
平成20年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 2
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最新のDTC-DiamondViewを用いたダイヤモンドの観察
*川野 潤阿依 アヒマディ
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抄録

ダイヤモンドに紫外線を照射すると、原子レベルの欠陥や微量な含有元素の影響で蛍光を発することがあり、その特徴は鑑別上欠かせない情報として利用されてきた。さらに微視的に研磨面を見た場合、欠陥や微量元素の濃度が成長バンドやセクター間でわずかに異なるために蛍光強度に差異が生じ、成長パターンが観察できる。このような成長構造はダイヤモンドの成長履歴を反映するために天然と合成では明確なパターンの違いがみられ、その判別を行う上で非常に有効な手がかりになり得る。
1996年にDiamond Trading Center (DTC) により開発されたDiamondViewTMは、この特徴を利用し、ダイヤモンドの研磨面に225 nm以下の波長をもつ強い紫外線を照射することによって、表面付近に励起された蛍光像を観察することができる装置である。この蛍光像のパターンは、ダイヤモンドの成長構造に対応する。この装置を用いれば、ルースおよびジュエリーにセットされたダイヤモンドの紫外線蛍光像を非常に感度よく短時間で観察できるとともに、燐光のキャプチャーも可能である。現在販売されているDiamondViewTMは第3世代にあたり、初代のものに比べるとサンプルのセッティング方法や紫外線の照射方向が変わるなど、操作性やイメージの質が向上している。
今回、最新のDiamondViewTMを用いてダイヤモンドの観察を行った結果、天然および合成に特徴的な成長構造を観察できたほか、処理されたダイヤモンドの識別にも有効であることが確認された。例えば、HPHTアニーリングと照射を含むマルチステップの処理を施されたピンクのダイヤモンドの場合、成長バンドに沿った蛍光強度の明暗やH3センターに起因する黄緑色の発光の分布が観察され、HPHT処理のみや照射処理のみの場合とは異なる蛍光像を示した。
また、ダイヤモンドの成長累帯構造を観察することによってその成長履歴や生成起源などを推定するための有効な手法として、カソードルミネッセンス(CL)法がある。この手法は、電子線を試料に照射して蛍光を見る方法であるが、電子線の影響は表面から数百nm以下で、紫外線に比べてさらに表層付近にとどまるため、より2次元的な蛍光像が観察される。その結果、非常に鮮明なイメージを得ることができるが、観察を行うにはある程度の時間をかけて試料室を真空にする必要がある。一方、DiamondViewTMは真空を必要とせず短時間で観察を行うことができるとともに、サンプルをセットしたまま回転してさまざまな角度から観察することも可能であるため、操作性が非常に優れている。さらに、燐光のイメージをキャプチャーすることができるのも、DiamondViewTMの利点である。この両者を目的に応じて使い分け、他の宝石学的手法や分光分析と組み合わせることで、ダイヤモンドの起源をより効率よく正確に判別することができる。

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