宝石学会(日本)講演会要旨
平成21年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 15
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Sarin社製ダイヤモンド・カラーグレーディング装置「ColibriTM」 の実用性 
*川野 潤西京 邦浩
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抄録

 ダイヤモンドのカラーグレーディングには、カラーをD-Zで表記するGIAのグレーディングシステムが広く用いられている。ここでのカラーグレーディングは、熟練したグレーダーがマスターストーンとテストストーンのカラーを厳密に比較することにより行われるが、一方でさらなる客観性と高い再現性を求めて、カラー・グレードを自動的に測定できる装置の開発・研究が進められてきた。
 「DiaMensionTM」などダイヤモンドに関する測定装置を数多く開発・販売しているイスラエルのSarin社は、カラーグレーディング装置の開発にも注力してきたが、2006年に新たなダイヤモンドの自動カラーグレーディング装置「ColibriTM」を発表した。この装置は、Ia型でケープ系の色相をもつダイヤモンドのカラーグレーディングに特化しており、独自のシステムを導入することにより測定精度が向上したとされている。GAAJ-ZENHOKYO Laboratoryは、開発当初からSarin社に協力し、イスラエルZENHOKYOのスタッフが「ColibriTM」の実用性の検証を行い、検証情報を提供してきた。Sarin社ではそれを基に改良を重ね、その後数度にわたるバージョンアップを行ってきた。
 今回、GAAJ-ZENHOKYO Laboratory は2008年製最新モデルの「ColibriTM」を導入し、そのルーティンワークにおける実用性について、新たに約15,000ピースのダイヤモンドを用いて詳細な検討を行った。
 その結果、「ColibriTM」の測定値には極めて高い再現性が確認され、_丸1_ 1 ct 未満で_丸2_カットグレードがGood以上のラウンド・ブリリアントで、_丸3_ケープ系の色相をもち、_丸4_紫外線蛍光性がNone~Medium Blueまでのもの に関しては、実用可能な測定結果が得られた。特に蛍光性がnoneに関しては、80%以上のものが測定結果の誤差が±1/2グレードの範囲に収まった。
 今回検証を行ったルーティンワークで任意にセレクトした約15,000ピースのダイヤモンドのうち、上記の条件_丸1_~_丸4_を満たすものは約70%に達する。このことから、ColibriTMの特性を理解し、適切な使用で得られた測定結果は、カラーグレーディングの際のひとつの客観的な目安に十分なりうると考えられる。さらにブラウン系やグレー系など、ケープ系以外の色相をもつものでも、ColibriTMの測定値に適正な補正を加えることで、正しいカラーグレードを推定することが可能である。しかしながら、Strong Blueの蛍光をもつダイヤモンドに関しては、測定値が補正可能な限度を超えて著しく小さい値を示すためColibriTMの使用は不適切といえる。
今後、さらに測定データを蓄積し、今回測定精度の低かった1ct以上のもの、ラウンド以外の形状のもの、カットグレードやカラーグレードの低いものなどを含めた多様なダイヤモンドにも対応できるよう検証を進めていく予定である。

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