宝石学会(日本)講演会要旨
平成28年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
会議情報

平成28年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
螺鈿に使われる貝殻の分析
―主にヤコウガイ、アワビについて
*矢崎 純子南條 沙也香小林 公治松田 泰典小松 博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 15-

詳細
抄録

螺鈿細工に用いられる貝には、ヤコウガイ (Turbo marmaratus)、アワビ(Haliotis (Nordotis))などの巻貝と、シロチョウガイ (Pinctada maxima)、クロチョウガイ(Pinctada margaritifera)などの二枚貝があるが、 螺鈿 材料としての貝殻の判別は、目視などで判断 されている。
本研究では、判別法確立のため主にヤコウ ガイ、アワビとシロチョウガイについて、その特 徴を分析した。
まず、各貝殻の構造(※1)の比較分析を行った。 ヤコウガイ、アワビでは巻貝特有の柱状真珠 層構造が、シロチョウガイでは二枚貝の構造 であるシート状真珠構造が確認された。この構造の違いは、研磨された表面の観察からも 確認することができた。
また、各貝殻の断面数か所を観察すると、ヤ コウガイでは、外面に稜柱層、内部に真珠層があり、内面にも稜柱層が確認された(※2)。また、内面の稜柱層の厚さが貝殻の箇所により異な り、その厚さによって真珠層の干渉色の見え 方に違いが見られた。
次に各貝殻の真珠層部を水平方向に切り出 し、薄片を作成し観察した。ヤコウガイでは、 薄片はゆるやかに湾曲したように見え、アワビ では波打ったように見える。薄片の断面の真 珠層を観察すると、ヤコウガイの真珠層は研 磨面に対し湾曲しており、アワビは箇所によって角度が変わっている。この真珠層構造が、 薄片の見え方に影響していると推定できた。
※1 二枚貝における殻体構造の進化、魚住 悟、鈴木清一、「軟体動物の研究」1981, 63-77,大森昌衛教授還暦記念論文集刊行会
※2 動物系統分類学 5(下)軟体動物(Ⅱ)

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top