宝石学会(日本)講演会要旨
平成28年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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平成28年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
光路分割及び散乱異方性としての宝石評価法の提案(3)
*川口 昭夫二宮 洋文
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p. 5-

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抄録

緒言:
カットデザインされたダイヤモン ドなどを「ファセット平面によって構成 される多面体」とみなせば、その輝きは 多面体による可視光の散乱現象である。 通常の評価は等方的な光源環境の元で行 われるために定量評価は難しい。これに対して入射光として直進光を用いた条件 で入射方位を多く取ることで等方的環境を近似し、間接観測した散乱光を画像解析する測定法をこれまでに報告してきた。 (2015 年・甲府、など)今回は相対的・ 間接的ではあるが散乱光強度との相関、 および「指数則」からの逸脱とダイヤモ ンドのカットグレードとの相関について経過報告する。
実験:
直進光源(赤色レーザー光または 白色LED光)、試料(ブリリアントカッ トダイヤモンド)、測定装置(ゴニオメー タ上の球面極座標 ( φ ,θ )を移動する光源、 放物面スクリーン)などはこれまでの報告と同じ装置を用いた。投影された「輝点」のサイズ(散乱光束の立体角)分布 は撮像画像をオリジナルの解析ソフトウェアによって画像処理し計測した。前回 と同じく、強度及び波長分散はカメラ感 度の段階的変化(レーザー光)と RGB 分 解(白色 LED 光のカラー画像)処理によって評価した。
結果・考察:
カットデザインされた「多面体」による光学散乱は、ファセット面での反射と屈折を通じた直進光の分割問 題に置き換えて考えることができる。1 本の直進光を試料に入射させた場合には 多数の「輝点」として散乱放射されることから、このときの「輝点」の分布状況 が散乱光観測(観測者による輝きの認知) の光路条件であり、光路分割の実測ということになる。ただし変換曲面に投影された「輝点」計測は間接的測定なので、強度についての議論は定性的として今後の検討課題と考える。
その理解の上で前回までに報告した「指数則」(散乱光の立体角Ωのヒストグラム 分布 N(Ω)=A0exp(-λΩ), λ>0 )が検出感度・カットグレードを変えた条件でも共 通して認められること、また立体角Ωの大 きい領域で「指数則」からの逸脱傾向が 認められ、高グレード(EX, 3EX,,,)では逸 脱が昂じて離散的分布になること、などから、光路分割の回数がグレード評価との相関を持つ可能性が示唆された。
具体的には光路分割の回数が少ない光路 (が得られるデザイン)が高グレードと される可能性が高く、その上で高強度(理想的には全反射条件)の散乱光束が視覚 の点で効果的と考えられる。ただし強度のみの議論では低グレードの「立体角Ωの小さい」成分との峻別が難しくなる可能性もあり、定性・定量の両面の検討が 求められる。

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