宝石学会(日本)講演会要旨
平成30年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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平成30年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
例外的に見られた干渉色と輝度の関係性について
*南條 沙也香鈴木 千代子小松 博
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キーワード: pearl, Teri, crystal layer
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p. 24

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抄録

真珠のテリは輝度と干渉色の2つの要素から構成されている。真珠の干渉色は透過の干渉色と反射の干渉色が同時に発現し、暗室で真珠に直接拡散光源を接触させると、上半球に透過の干渉色が、下半球に反射の干渉色が現れる。そしてこの干渉色の色相の多色性、鮮やかさ、明るさとテリとは相関しているということがこれまでに報告されている(阿倍ら;宝石学会,2012、小松ら;宝石学会.2014)。

しかしながら近年、目視ではテリが良いとされるが干渉色の発現が弱い真珠が見つかった。そこで干渉色と輝度との相関性について調べることを目的とし、これらの現象について考察を行った。

入手したアコヤ真珠のネックレス全ての珠について輝度分析値と干渉色分析値の測定を行った。その結果輝度分析値は高い値を示すが、干渉色分析値は低い値を示す珠が見られた。

これらの珠について電子顕微鏡により結晶構造観察を行った。真珠のテリに影響を与えると考えられている表層から 100μm までを観察したところ、結晶層に大きな乱れや異質層の存在は観察されなかった。しかしながら、 10μm ごとに結晶の厚さの平均値を調べると、 ①結晶層の厚さが均一ではないこと、 ②0.3μm 未満の結晶層が含まれていること、 ③0.5μm 以上の結晶層が積層しているという 3 つの特徴が見られた。

結晶層の厚さから発現する干渉色の波長を求めると、結晶層の厚さが不均一な場合様々な色の干渉色の波長が求められ、赤と緑を同時に発現しているサンプルも確認できた。また 0.3□m 未満の結晶層からは可視光外の波長が求められた。干渉色は同じ波長の光が互いに強めあって発現するため、このように異なる色や可視光外のものが重なりあうことで干渉色が強調されず見えづらくなっているという可能性が考えられる。特に赤と緑は補色同士でありこれらの光の色が重なると白色の光となるため干渉色として確認できないことが考えられる。また、 0.5□m 以上の結晶層が積層すると赤外部の波長を示し、可視光内の波長に収まるためには次数が高くなる。干渉色において次数が高くなるとテリが悪くなるとの報告もされており(和田;真珠の科学,1999)、このことが干渉色の発現を弱めている可能性が考えられる。

今回の実験から干渉色が強く発現するためには①結晶層の厚さが均一に積層すること、 ②次数が 2 以下で発現する厚さで積層することが重要であるということが分かった。

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