宝石学会(日本)講演会要旨
2019年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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2019年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
低品位貴金属に含まれる金属元素の特徴
福田 千紘*西島 武志宮﨑 智彦
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キーワード: Gold, Silver, Platinum, Alloy, Low-carat Gold
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p. 17

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抄録

近年金価格の上昇に伴い金製の装身具全般の価格上昇した。アクセサリーにおいては前述の理由で高品位の貴金属を使わず低品位の貴金属を使用することが多くなっている。これらは高品位の貴金属に比べ卑金属の使用率が多い。よってイオン化傾向の高い金属の比率も高く汗などにより溶出する金属も多くなると考えられる。

本研究では実際に医療機関で入手した金属アレルギーのパッチテストの結果とその対象元素を参考に低品位の貴金属に含まれる各種金属元素の含有量を調査した。

試料は市販されている低品位の貴金属合金として Au 合金は 41.6wt%以下(K10 相当以下)のものを Pt 含有合金は 20wt%以下のものを入手し EDXRF で組成分析を行った。国内では金合金は Au:37.5wt%(K9 相当)以上、Pt 合金は Pt:85wt%(Pt850)以上でなければ貴金属として認められていないが今回はそれ以下の純度のものも便宜的に低品位貴金属として表記した。定量分析にあたり FP バルク法では理想値から乖離した結果を示すものが見られたため特定の元素は標準試料を用いて定量値を計算した。

分析の結果、Au 及び Pt の含有量は刻印表示通りであり誤差の範囲で理想値と一致した。それ以外の元素として Ag, Cu, Pd, Zn, Ni 等が検出された。Ag, Cu, Pd は割金として一般的に使用されており高品位の貴金属合金にも使われている。Ni は”ホワイトゴールド”には銀色の Au 合金を得るためによく使用されているが低品位貴金属においては”イエローゴールド”からも検出されるものが見受けられた。

比較対象として歯科治療用の健康保険対象となる金銀パラジウム合金も同様の条件で組成分析を行った。その結果 JIS で定められている 12wt%の Au と 20wt%の Pd 以外に 50wt%程度の Ag、他には Cu, Zn, Ir, In 等が検出された。歯科用金属と低品位貴金属を比較すると共通する元素がいくつか見られた。

低品位貴金属は比較的低価格で硬度も高く扱いやすい反面イオン化傾向の高い元素の含有量が多くなる傾向が認められる。これらに感作する場合は取り扱いに配慮が必要と考えられる。

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