肺癌
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症例
全身多発転移をきたした心臓原発血管肉腫の1例―過去20年間の本邦肺転移症例報告30例の検討を含めて―
宮本 牧高森 幹雄村田 研吾和田 暁彦藤田 明
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 50 巻 2 号 p. 186-193

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抄録

背景.心臓血管肉腫は非常に稀な疾患で,肺転移後の予後は不良,治療法も確立されていない.心臓原発血管肉腫全身多発転移に対し,docetaxelによる化学療法と放射線療法を行った1例を経験した.肺転移を有する本邦報告30例の検討を加えて報告する.症例.65歳男性,腰痛,左下肢痛と血痰を主訴に近医を受診,両肺に多発結節影を指摘された.CTで両肺,肝臓,左腸骨,右心房に腫瘤性病変を認めた.左腸骨のCTガイド下生検と右歯肉腫瘤の生検組織より血管肉腫と診断した.化学療法(docetaxel),免疫療法(teceleukin),局所放射線治療を行ったが,入院80日目に肺出血による呼吸不全のため死亡した.病理解剖では右心房原発低分化型血管肉腫を確認した.結論.過去の報告例も含め肺転移を起こしてからの予後は,平均2~3ヶ月と不良であるが,近年化学療法に反応して少数の長期生存例も報告されている.血管肉腫の化学療法,組織型に基づく薬剤選択や適応について症例を蓄積検討する必要があると考える.

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© 2010 日本肺癌学会
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