肺癌
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症例
上大静脈症候群と下大静脈症候群を呈した巨大な胸腺癌の1剖検例
前倉 俊也中村 孝人丸山 博司時津 浩輔折野 達彦
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 51 巻 3 号 p. 202-206

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抄録

背景.胸腺癌や浸潤性胸腺腫では腫瘍浸潤による上大静脈(SVC)症候群を呈する報告例は比較的よく知られているが,下大静脈(IVC)症候群を呈する症例は稀である.症例.76歳男性.咳嗽を主訴として近医を受診し胸部X線写真にて異常陰影を指摘され,当院呼吸器科に入院した.CTガイド下生検にて胸腺癌と診断し,入院時より顔面,両上肢の浮腫があり胸部CTにて腫瘍浸潤によるSVC症候群と判明した.放射線療法にて上半身の浮腫は軽快したが,徐々に両下肢の浮腫が出現増強した.腹部造影CTにてIVCの血栓を疑い抗凝固療法を施行し,浮腫は著明に改善するも全身状態が増悪し入院後約7カ月で死亡した.剖検を施行し,右前縦隔から前胸部と横隔膜を超えて,肝臓背面に浸潤しIVCを巻き込みながら肝臓を圧排する巨大な胸腺原発扁平上皮癌が確認された.結論.胸腺癌の進展によりSVC症候群に引き続いてIVC症候群を呈した稀な1剖検例を経験したので報告する.

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© 2011 日本肺癌学会
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