肺癌
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症例
肝細胞癌の孤立性縦隔転移の1例
寺町 政美中川 正嗣
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 51 巻 6 号 p. 736-741

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抄録

背景.肝細胞癌の孤立性縦隔転移は稀である.症例.症例は51歳,男性.多発肝細胞癌に対する肝動脈塞栓療法中に,前縦隔の結節影を指摘された.胸部CTやMRIで周囲への浸潤を認めず,非浸潤性胸腺腫の術前診断で,胸腔鏡下胸腺右葉切除術を施行した.Hep Par 1を含む免疫染色の結果,肝細胞癌の縦隔転移と診断した.3ヶ月後に腹部大動脈周囲のリンパ節が孤立性に腫大したため,縦隔転移も前横隔膜リンパ節への孤立性転移であったと診断した.術後18ヶ月の現在,UFTを内服しながら担癌生存中である.肝細胞癌の孤立性縦隔転移は極めて稀であり,本邦での報告は本例を含めても11例に過ぎない.この11例中,局所のコントロールが良好であった5例は1年以上の予後が得られており,孤立性縦隔転移を摘出する意義は十分あると思われた.結語.肝細胞癌の孤立性縦隔転移に対して胸腔鏡下摘出術を行うことで,予後の改善が得られる可能性がある.

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© 2011 日本肺癌学会
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